
第四章ではアメリカの大学教育の問題点を上げて、最後に興味深い提案をしています。
アメリカの大学をビジネスとして見るとこの章で引用されている数字は、私にとっていずれも驚くべきものばかりでした。
過去40年でアメリカの大学の授業料は1400%上昇しているそうです。
医療費が同じ時期に600%上昇していますが、それをはるかに高い上昇率です。
一方、大学授業料の上昇率と対照的に旧態依然としたもの、変わったものといえばスライドの代わりにパワーポイント、法律用便箋の代わりにノートパソコンが使われる様になりました。
これでわかる様に、授業料の上昇率に対して大学の提供する価値は余り上昇していません。
何故、親たちはこの様な大学へ対価に見合わない非常に高い授業料を支払うのでしようか?
スコット・ギャロウェイはアメリカの大学の授業料を押し上げた要因は少数のエリート大学の希少性であり、多くの親たちはエリート大学を公益の為の存在ではなく「贅沢品ブランドの一種」と思い込んでいることにあると説いています。
そして、学生ローンというヘロインが、大学という贅沢品を購入する為に湯水の様に使われています。
今やアメリカの学生ローン残高は総額1兆6,800億ドルだそうです。
これはアメリカのクレジットカードの負債や自動車ローンの残高の総額よりもはるかに大きくなり、平均的なアメリカの大学生は卒業時に3万ドル近くの借金を抱えています。
スコット・ギャロウェイはこの章で、この状態を改革する為に以下の提案をしています。
(1) 大学定員の増加
州と協力して州立大学の定員を大幅に増加させ、授業料を下げる必要があります。
(2) 私立校への課税、公立校へ補助金
一部の私立校に大きな資金が集中し、寄付金が多いその学校の卒業生の子息子女が優遇して入学できる様な、現代のカースト制度になっている今の大学教育を変える必要があります。
(3) 大学への寄付金への課税を行う。
ハーバード、MIT、イエールへの寄付金の合計額(850億ドル)は、多くのラテン・アメリカの国のGDPより大きいそうです。
大学が提供する価値よりも多くの現金が大学へ提供されているのであれば、これらの大学は非営利組織ではなく、営利企業であります。
(4) GAFA+Xと大学の連携
いま、私たちは、数十年に一度の大きなビジネスチャンスをつかみ、授業料無料の大学を開設する企業を必要としています。
このビジネスモデルは従来のモデルをひっくり返したものとなります。
その企業が大学生のトレーニングから、資格認定、テスト、成績評価まで行い、その大学の優秀な学生を獲得する仕組みをスコット・ギャロウェイは提案しています。
しかし、これを今すべきなのは巨大帝国となったGAFAや、1企業ではなく政府なのかもしれませんが。