サピエンス全史を読んで

ユヴァル・ノア・ハラリの著書『サピエンス全史』を読みました。

読み始めると、どんどん引き込まれる大変興味深い著作でした。

この著者は歴史学者で、非常に見事な語り口で人類の過去の歴史を振り返っていますが、下巻の後半では未来学者と言ってもよい予言をしています。

歴史を振り返るだけでなく、これからの人類はどうなってゆくかについても多くの示唆をしている著作です。皆さんに是非、一読をお勧めします。

この本の下巻に私の心にずつと残った大変興味深いアメリカの宇宙飛行士とアメリカ先住民との出会いの物語、伝説がありますのでご紹介します。

1969年7月20日、ニール・アームストロングとバズ・オルドリンが月面に着陸した。

この月探検までの数か月間、アポロ11号の宇宙飛行士たちは、アメリカ西部にある、環境が月に似た辺境の砂漠で訓練を受けた。

その地域には、昔からいくつかのアメリカ先住民のコミュニティがあった。

そして、宇宙飛行士たちと先住民のこんな出会いの物語 というよりは伝説 が生まれた。


ある日の訓練中、 宇宙飛行士たちはアメリカ先住民の老人と出会った。老人は彼らに、ここで何をしているのか尋ねた。

宇宙飛行士たちは、近々月探査の旅に出る探検隊だと答えた。

それを聞いた老人はしばらく黙り込み、それから宇宙飛行士に向かって、お願いがあるのだが、と切り出した。


「何でしょう?」と彼らは尋ねた。


「うん、私達の部族の者は月には聖霊が棲むと信じている。私からの大切なメッセージを伝えてもらえないだろうか」と老人は言った。


「どんなメッセージですか?」


老人は部族の言葉で何かを言い、宇宙飛行士たちが正確に暗記するまで、何度も繰り返させた。


「どういう意味があるのですか?」


「ああ、それは言えないな。私らの部族と月の聖霊だけが知ることを許された秘密だから」


宇宙飛行士たちは基地に戻ると、その部族の言葉を話せる人を探しに探して、ついに見つけ出し、その秘密のメッセージを訳すよう頼んだ。

暗記していた言葉を復唱すると、訳を頼まれた者は腹を抱えて笑いだした。

ようやく笑いが収まったとき、宇宙飛行士たちは、どういう意味なのかと尋ねた。彼によれば、宇宙飛行士たちが間違えないように苦心して暗記した一節の意味は次のようなものだった。

「この者たちの言うことは一言も信じてはいけません。あなた方の土地を盗むためにやって来たのです」

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